旦那様は社長 *②巻*
「ガシャーン──…」
「…何だ今の音?!光姫?!」
朝の6時。
まだいつもなら社長はベッドで眠っている時間。
そんな時間に、社長を目覚めさせるほどの大きな音を立ててしまったのはあたしだ。
「どうした?具合でも悪いのか?」
テーブルの脚を背もたれにしながら、ペタンと床に座り込んだあたしの顔を、社長が覗き込んだ。
「…ちょっと…目眩がしただけだから…」
ゆっくり立ち上がろうとするけど、再び体がよろけて倒れ込む。
「…っおい!しっかりしろ!!」
社長はそんなあたしを抱き止め、そのまま体を持ち上げた。
「お前、顔が真っ青だぞ…。今日は会社休んでいいから…っつーか休め」
寝室の扉を開け、あたしをベッドの上に寝かせる社長。
そのまま側に座り込み、あたしと自分のおでこに手を置いて、熱を比べている。
「…ちょっと熱っぽいかもな…」
そう言うと、ベッドサイドのチェストから体温計を取り出した。
「ほら、熱計れ」
あたしはただ黙って頷き、差し出された体温計を脇に挟む。
以前は体温計なんて有栖川家には存在しなかったけど……
あたしが無理矢理買った。