旦那様は社長 *②巻*
「…何笑ってんだよ?笑い事じゃねーぞ?!今すぐ病院行くから」
社長はあたしの体を再び抱き上げた。
「えっ?今からって…まだ朝の6時だよ?」
「だから?」
スタスタと歩きながら、社長があたしに視線を合わせる。
「だからって…まだ病院開いてないでしょ」
「有栖川の人間には時間なんて関係ないんだよ」
──なんなんだろ…この有栖川のいい加減な常識は。
いくら有栖川の人間だって…何でもかんでも特別扱いってわけないでしょう?
「はああ……」
自然とため息が漏れた。
「お前、誤解すんなよ?有栖川にはちゃんと主治医がいて、24時間対応してくれるようになってんだ」
「主治医?」
「ああ。有栖川総合病院の院長だ」
「有栖川総合病院?!」
「何だよ、知ってんのか?」
「知ってるも何も……」
有栖川総合病院は、あたしの両親が事故で亡くなった時に運ばれた病院。
だから……
あたしにとっては辛い記憶が残る場所だ──…
まさかあの病院も有栖川家に関係していたなんて…。
…よくよく考えたら同じ名前だけど、まさか病院まで経営しているなんてーー。