線香花火
ため息が零れそうになって、あたしははっとそれをのみ込んだ。
やだ、サユリちゃんといるのにため息なんかついて、つまらないって思ってるとか思われたくない。
作り笑いでその場を乗り切り、サユリちゃんとおばあちゃんが会話を始めたところで席を立つ。
移動した先は、おばあちゃんちで唯一クーラーのある部屋。
つけっぱなしになっていたそれのおかげで、空気はひんやり冷たかった。
そのままぼけーっとしていたら、いつの間にか鳥肌がたっていた。
昼間の気温が嘘のように肌寒い。
窓越しに見えるのは、赤らんだ曇り空。
慌ててスイッチを切って、両腕をかき抱いた。
そして、ちょうどその腕に止まった蚊を、ぱちんと叩いた。
吸われたばかりの血が、鮮やかだった。