線香花火
「お久しぶり、ヨウちゃん」
「あり、本物だった?」
きょとん、と傾げた首を、彼女の父親と思われる人が肘で小突く。
「痛」
「アホな娘で悪いね」
ちゃっかり注文していたサユリちゃんに、かき氷をふたつ手渡しながら、そのひとは笑った。
……ん? ふたつ?
勝手に作られていたイチゴ味。
「後ろ並んでる人の邪魔だし、話は違う場所でしたら」
囁かれ、まぁ確かに、と思った。
もう行っちゃうの、と言う、久々に再会した前の学校の友達、ヨウちゃんに、またね、と手を振って、あたしたちはまた歩きだす。
屋台の終わる頃の時間に、もう一度来てみようかと思っていた。