線香花火
「疲れたー、座るトコないかな」
時計がないから分かんないけど、おそらく数時間後。
大きく“祭”と書かれたうちわをぱたぱたさせながら、サユリちゃんが言った。
「ないんじゃない」
と、すでに溶けてしまったかき氷をスプーン型(?)のストローで吸いながら、あたしは答える。
なんとなくもう雰囲気は楽しんだんだから、帰ってゆっくりしたいとも思ったりするけれど。
あろうことか、サユリちゃんが花火を見たいだなんて言うから、まだ、あちこちうろついていた。
けど、さすがに何時間とあればだいたい見尽くしてしまうし、ステージじゃ近くの高校の軽音楽部がハードロックを演奏中だけど、テンションについて行けなくてあえなく退散。
だからといって何もせずにいるのも、昨日と違って冷める様子のない熱に、無駄に体力を奪われるばかり。