線香花火

黙ったあたしをどう受け取ったのか、

「いーよ、無理やり聞こうとかは思ってないから」

と、サユリちゃんは手を休めずに言った。

“祭”の文字が、ひらひら揺れる。


「祭り来れば、少しは気分あがると思ったんだけどなぁ……」

彼女の呟きは、静かに宙に消えた。


あたしがそれを深く考える暇もなく、サユリちゃんは突然立ち上がって、

「射的やろ、射的」

と歩き始める。

その様子を見るに、あたしに拒否権はないらしい。


「明日はアメリカ帰らなきゃなんだから、楽しんどかないと、ね?」

ばちっとウインクするサユリちゃんは、やっぱりサユリちゃんだ、と思った。

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