線香花火
転校なんか、したくなかった。
自分の部屋が貰えると聞いても、電車で3駅分しか離れていない距離だと言っても、嫌なものは嫌だった。
だいたい、電車3駅分って、結構な距離だ。
まだ中学生で、さほどお金も持ってないから、電車で出かけたことも数える程しかなくて、だからこそ、遠く思えてしかたなかった。
それに。
離れたくないひとがいた。
今も、認めたくないって思ってたりするけれど。
罰ゲームなんて名目で、重なりあった唇の感触を、ふとした瞬間思い出したりとか、誰かとつきあっても夢中になれないこととか。
寂しさに紛れていつも同じひとを想う意味に、ほんとうはとっくに気づいているんだ。