線香花火
記憶と夜に咲くは
射的も、だいぶ並んでいた。
あたしはそれより2つ隣のヨーヨーすくいの方に目を惹かれる。
……ってことで、サユリちゃんに一言断り、あたしはそっちの列に並んだ。
思いの外すぐ順番が来て、慣れた手つきで紫色のをすくい上げる。
なぜかこれだけは、昔から得意だ。
「巧いねぇ」
なんて声にちょっと嬉しくなりながら、まだいるであろうサユリちゃんを探した。
なのに、どういうわけか。
射的の列に、彼女の姿はなかった。
……自分でやりたいって言っていたのに、どうしたんだろう。
それに、どこか行くなら、あたしに何か言っていくはず。
そうしないと、もしはぐれたらば大変だから。
あたしがケータイを持っていないため、連絡も出来ないんだ。