線香花火
少し離れた神社の階段を、あたしはひとり上っていた。
リズムよく響く、あたしの足音。
どこかの誰かが昔面白半分で流した幽霊話のおかげで、訪れる人は滅多にない。
どこかの誰かって、まぁ、あたしだけども。
階段を上りきった途端、タイミングよく、最初の花火が上がった。
夜空に鮮やかに、金色が舞う。
思わず見とれて、見上げるような格好のまま、バランスを取ろうと後ずさる。
と、背中に、軽い衝撃。
何かにぶつかったのが、分かった。
「あっ」
視界が回る。何かに躓いたみたいだ。
重なった、声。
「……あ」