線香花火
去年は誰かが忘れていった、線香花火で賭けをした。
夜空に咲く花も忘れて。
先に消えた方が、何かひとつもうひとりの言うことを聞く。
そう、決めて。
勝ったのは、あたし。
何を血迷ったのか、思い出すだけで恥ずかしいけど。
──キスして。
そんなお願いを、聞いてくれた。
告白さえ出来なかったあの日。
何事もなかったかのように、別れたけれど。
……それからあたしは引っ越して、会うことすらもなかったけれど。
それでもあたしは、ずっと忘れられなくて──…。