線香花火
「逢えると、思わなかった」
──あたしだって。
「けどもしかしたらって、思ってた──…」
──あぁ、どうしよう。
嬉しい、こころがうち震えるほどに。
気配が動いたのが分かる。
ゆるりと目を向ければ、彼がかがんだのが見えた。
視線が絡まる。
「……っ、あのね!」
だぁん、と、身体中に響くような花火の音に、一瞬、怯む。
けどもう、同じことを悔やみたくないから。
今度こそ、君に──。
止まっていた時間が、動きだす。
「好き──…」
end.