線香花火


「逢えると、思わなかった」


──あたしだって。


「けどもしかしたらって、思ってた──…」


──あぁ、どうしよう。

嬉しい、こころがうち震えるほどに。


気配が動いたのが分かる。

ゆるりと目を向ければ、彼がかがんだのが見えた。

視線が絡まる。


「……っ、あのね!」

だぁん、と、身体中に響くような花火の音に、一瞬、怯む。

けどもう、同じことを悔やみたくないから。


今度こそ、君に──。


止まっていた時間が、動きだす。


「好き──…」




end.
< 26 / 27 >

この作品をシェア

pagetop