線香花火
「……ただいま」
いつもは返事なんかないのに、今日に限ってぱたぱた足音がして、なぜか母親が出迎えてきた。
「どうしたの」
「は? 明後日から、夏休みでしょう?」
その通りだけど、それがどうしたっていうんだろう。
首を傾げると、催促されたあたしの予定。
……ま、暇なんだけど。
時々入った美術部の活動日以外は、これといった用事もない。
「サユリちゃんがね、帰ってくるんだって」
「え、マジで」
サユリちゃんとは、アメリカに住んでいるいとこだ。
「おばあちゃんちに泊まるっていうから、あんたも一緒にどう? って」
「行く」