線香花火
夏空と甘い封印
おばあちゃんちは、あたしの前の家から5分ほど歩いた場所にある。
駅まで迎えに行こうか、と、そう言うサユリちゃんの申し出を断って、あたしはひとり歩いていた。
──夏休みは、一瞬一瞬は長いのに、毎日は、妙に短い。
ぼけーっとしていただけなのに、気づいたときには約束の日が目の前だった。
そんなわけであたしは電車に揺られて、かつて過ごした場所に居る。
変わったのは、あたしの帰る先だけで、何も変わらない町並み。
たったの1年、なんだから、あまりにも変わり過ぎてたら、それはそれで違和感を感じずにはいられないだろうけども。
だんだん疲れとともに蝉の声が耳につき、ひとけがないのをいいことに、あづいぃ、とぼやいていた。
足元から、熱気がまとわりつく。