線香花火
「どうした?」
心配そうな声音。
きっと突然、あたしが明らかに落ち込んだから。
だからあたしは、すぐに作った笑顔を乗せる。
そうすればほら、感情は簡単に隠されてしまう。
「なんでもないよ」
1年前のあの日のことを、どう話せばいいのか分からない。
あたしの言葉に、
「なんでもなく、ないでしょ」
と、誤魔化しなんてものはあっさり見破られ、けどそれ以上は追及されなくて、あたしはほっと息を吐いた。
きっと、追及されてたら、あたしは支離滅裂な言葉で、八つ当たりにも似た科白を口走ってしまう。
サユリちゃんは、関係ないのに。