線香花火

「どうした?」


心配そうな声音。

きっと突然、あたしが明らかに落ち込んだから。

だからあたしは、すぐに作った笑顔を乗せる。

そうすればほら、感情は簡単に隠されてしまう。


「なんでもないよ」


1年前のあの日のことを、どう話せばいいのか分からない。


あたしの言葉に、

「なんでもなく、ないでしょ」

と、誤魔化しなんてものはあっさり見破られ、けどそれ以上は追及されなくて、あたしはほっと息を吐いた。


きっと、追及されてたら、あたしは支離滅裂な言葉で、八つ当たりにも似た科白を口走ってしまう。

サユリちゃんは、関係ないのに。

< 8 / 27 >

この作品をシェア

pagetop