もしも、僕らが




そして、右手で勢いよくその涙を拭った。

その勢いに押されるように、短い髪が揺れる。




「お前・・・」


「ごめん、あたし今日、まちちゃん家泊まるけん」




小夏は俺から視線を逸らした。
涙を拭いた筈の瞳にはまた、雫が溜まっていた。


彼女は、廊下に突っ立っている俺を押しのけて。

玄関のドアを勢いよく開けて飛び出していった。




俺は、去っていくその幼い背中をじっと見つめる。



・・・なんだ??
なんか、あったんかよ??





「・・・郁依。帰っちょったの」






後ろから声がした。
俺は振り返る。

そこには、母さん。

その顔はどこか、いつもよりも老いて見えた。





「・・・小夏は・・・」



「いいから、居間に入んなさい。・・・大事な話があるけん」








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