もしも、僕らが
「もう、変える気はないけん。
出発は、8日の夕方。
それまでに、荷物まとめちょけ」
父さんが、立ち上がった。
そのまま、居間から出ようとする。
その背中に、俺は叫んだ。
「そんな急な話、納得できるわけないやろ!!!
俺達にだって、意見を言う権利はある・・・」
「郁依」
俺達に、背中を向けたまま、父さんが言った。
「もう、決まったことじゃけん」
いつものような、陽気な父さんの声じゃなかった。
全く正反対の声。
低くて、威厳のある声。
俺は、押し黙った。
「・・・ちゃんと準備、進めとけよ」
その背中は、廊下に出て。
見えなくなる。
庭で源五郎が1人、静かに鳴いていた。