もしも、僕らが





・・・やっぱり。

全部知ってたのか。



俺は黙り込む。

別に、彼女を騙そうとしていたわけじゃない。

彼女の、悲しそうな顔を・・・見たくなかったから。






「分かっちょんよ。

言いにくかったんよね・・・。

あたしが、残念がるの分かちょったから。


郁は優しいもん。


あたしに、心配させたくなかったから。

だから、言わなかった。




・・・だけど・・・」







見る見るうちに。

さっきまで凛としていた顔が、崩れ落ちていく。






「そんな優しさなんて・・・いらんもん。

あたしは郁から・・・直接訊きたかったもん」






・・・傷つけた。


傷つけたくなくて、何も言わなくて。

結局は、彼女に打ち明けることで、自分が引越しするのを再確認させられるのが。


嫌だったんだ。



彼女が傷つくからなんて、自分のいいほうに考えて。

結局何も言わなくて。


彼女を傷つけた。

胸が痛かった。


そっと、彼女に手を伸ばす。






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