禁断のドラムヴィーナス

笑ってくれた閖亜先輩。仄かに香る甘い臭い。美人で仕草が可愛くて、話しやすくて、ダンスが上手い。そんな閖亜先輩に憧れてる。夢は夢では終わらせない。終わらせたくないんだ。
「はい!!」
下手なドラムは聞かせたくない。前と同じか、それより上のレベルで叩いた、本来の私のドラムを聞いて欲しい。ドラムが大好きな、一人のドラマーの「私」のドラムを。
「どうして…閖亜先輩は、私に優しくしてくれるの?」
私の呟きを、閖亜先輩が聞いていないことを願って、楽譜を開いた。大好きなディスコ・パーティ2の楽譜を。
「仄佳先輩、最近熱心だよね!!」
「昔は嫌がってたフォーク、楽しそうに叩いているしね。」
「私、仄佳先輩にスゥイング、教えてもらおうかな?苦手なんだよね、スゥイング。」
出身中学の後輩に誉めて(?)貰えた冬の一日。窓の外には、すごく綺麗な雪が降っている。
聖なる粉雪の降る出身中学校の吹奏楽部室で、後輩が私につけた二つ名、それは。
‘儚き姫’ー。
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