『幸せ』を抱いて

「お父さん!」

悲痛な叫び。

ぼやけた視界に、涙を湛えた顔がふたつ並び、こちらを見ている。


暖かい。
寂しくはない。


重い手を持ち上げ、片方の顔に添える。

涙。

大丈夫。
辛くはないから、だから、微笑んでみせて…?

ほら、まだ俺も、微笑んでいられているだろう…?


今なら、伝えられるよ…。

そうして俺は、微笑みを湛えて、口を開いた。

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