鬼の花嫁

「家のジジイの話によると、ジジイがまだガキだった頃にも今みてーに全然雨がふんねー年があったんだとよ。で、その年は結局飢饉がおこってな、村の食糧庫も底をついてみんな弱っていったんだ。中には餓死する者もいてな、このままじゃみんな死んじまうってんで村長が鬼と交渉したんだとよ。」

「交渉?」

「あぁ、雨を降らせ作物を実らせ村人を救う。
 その代わりに村で一番の女を鬼にやる。」

「それで?」

「村で一番の女ってのは村長の娘で村長は反対だったんだ。
 もちろん娘もな。鬼の嫁だぜ?
 お前だったら怖いだろ?」

「まぁ・・・」

「で、結局村のためなら仕方がないってことで娘は鬼に嫁いだんだ。
 そしたらちゃんと鬼は約束を守って村人たちはどうにか
 食いつなぐことができたんだ。」

「なるほど・・・そのあと娘はどうなったのですか?」

「娘は嫁いだっきり、二度と村には戻ってこなかったそうだ。
 生きてんのか死んでんのかもわからねぇ。」

「そーなんですか・・・・」

「まぁ、きっと俺らの時代はだいじょーぶだぜっ!
 俺が雨降らす踊りでも踊ってやるぜっ!!!」

「ぷっ」

「今笑ったなーーーっ!!!
 俺の踊りすげぇんだぜっ!
 みてろよ!!明日は雨だーーー!!!
 降れっ降れっ!雨よ降れ~~~!!」

そう言って佐久助殿は変な踊りを始めた。

「降れっ降れっ降れーーーーーーー!!!」

「あはははははっ」


幸せなこのときがずっと続けばいい・・・


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