鬼の花嫁
結局次の日も、
その次の日も
雨が降ることはなかった。
田んぼの水は干からびつつあり
今年は飢饉になる。と、村中が
不安の声で溢れていた。
「みすずちゃーーーーーーーんっ!」
私の名を叫びながら許嫁の弟、隼太郎が走ってきた。
「どうしたの?」
「あのねーっ!兄ちゃんが・・・」
「こらあああああぁぁぁぁぁあああっ!!!!
はーーーーーやーーーーーたあぁあああぁぁ!!!」
「あ、兄ちゃん!」
「はぁっはぁっ・・・・・美鈴ちゃんっ!こいつ何も言ってないよねっ!」
「う・・・うん。・・・どうしたの?」
「あはは~・・・よかったぁあ・・・・
・・・なんでもないからっ!!!
気にしないでっ!」
村中に響き渡るようなおっきい声で叫びながら
ものすごい勢いで走ってきたのは許嫁・・・
吉田 尚太郎
悪い人じゃないけど・・・苦手。
「兄ちゃんはぁ、美鈴ちゃんのことがぁ、」
「あーーーーーーーーーっ!!!!ダメっ!!!ダメだっての!!!」
慌てて隼太郎の口をふさぐ。
よっぽど言われたくないらしい。
何度も大声出してうるさいやつだ・・・
「兄ちゃんさぁ、はっきり言った方いいと思うよ!」
「うるせーお前に何がわかるっ!!!」
「兄ちゃんの意気地なし!」
「なんだとーーーっ!!!!」
兄弟喧嘩が始りそうだった・・・
止めないとな。
「あの~・・・」
「あっ、ごめん!」
慌てて答える。
全く・・・こいつは落ち着きがない上、幼い。
本当に同じ年なのか疑問だ。