鬼の花嫁
尚太郎に言われて振り返ると
佐久助殿が手をふりながら
お菊殿と歩いて来た。
「おはようございます」
「おう!」
「おはよう、美鈴ちゃん、尚太郎君、
見送りに来てくれたの?」
「はい。」
「ありがとうね。」
「いえいえ…気をつけて行ってください。
そしてどうかお元気で…」
「おいおい、そんな死ぬわけじゃねーんだからさぁ。そのうちまた会えんだろ。」
「でも…」
「俺は湿っぽいのダメなんだよ…
もっと明るく送り出してくれ。」
そういって佐久助殿は笑った。
「じゃぁ、今度会う時は…」
「「いたぞーーーーーーーっ!!!」」
尚太郎が何か言いかけたとき、
誰かが叫んだ。
それは酷く鋭く、
大きな声で、
深緑の森に響いた。