鬼の花嫁
その声にはっと我に返り、
私達は皆全力で、
泥がはね、足が汚れることも構わず
疾走した。
走って、走って、
後ろをみると、さっき叫んだ男を先頭に
6人ぐらいの村の男が追ってきていた。
「…っうぁあっ!?」
ばしゃんっ!!
後ろを気にしていたせいか、
泥に足をとられ私は転んでしまった。
「美鈴!?」
「美鈴ちゃん!!」
3人とも私を振り返った。
「いいからっ!
私を置いてって!!
早く逃げて!」
私は叫んだ。
「ばかやろう!
お前を見捨てられるわけないだ…」
「いいえ!!
佐久助殿はお菊殿を守ることが
最優先です!!
俺が!美鈴を守るから!!早く!」
「っ!お前!!言ってる意味が…」
「わかってます!!」
その尚太郎の声は、
今まで聞いたことがないくらい真剣で、
強く、重く、響いた。