鬼の花嫁
緋昏は、美鈴を抱えたまま
大股でずんずん歩いた。
運ばれている間、美鈴は恐怖で声も出せず、身動きが取れなかった。
そして、半刻ほどたったであろうか…
普通の山道から、岩がごろごろある道になり、やがて絶壁に突き当たった。
緋昏は美鈴をおぶり、体勢を立て直した。
「しっかり捕まってないと落ちるぞ。」
そう言って一気に壁を登り始めた。
「〜〜〜〜ッ!!?」
後ろに落ちそうになって美鈴は緋昏にしがみついた。
あっという間に登り、住家に着いたようだった。
「…下りろ。」
美鈴は背中から下りてその場に立ち尽くした。
わすかながら月明かりで見た、
緋昏の家は、断崖絶壁の途中にある大きな洞穴だった。
「我が家へようこそ。
さぁ、中に入りたまえ。」
闇へと誘う鬼の手をとり
美鈴は中へ入っていった。