俺様執事に全てを奪われて
「乙葉は結婚式、いいのか?」

「いいも何も呼ぶ人がおらん」

「そうか」

父がわたしの頭をぽんぽんと優しく叩いた

「結婚、須山で良かったのか?」

「ああ、元で良かった
いや…元がいい」

「そうか、なら何も言わん
子作りも、必死にならなくていいからな」

「え?」

父はさびしそうに笑った

「妊娠しないと…女が責められる
父さんはずっと、母さんに辛い思いをさせてしまった」

父が唇を舐める

当時のことを思い出したのか

父の目にうっすらと涙が浮かんだ

「お前も知っているが・・・父さんたちはなかなか子宝に恵まれなくてな
母さんと離婚しろって騒がれたりもしたんだ
でも原因は父さんのほうにあってな…
父さんのほうができにくい身体だったんだ
だから子供ができない苦しみは父さんも母さんも知ってる
お前たちにもできれば同じ苦しみは与えたくない
気にしなくていい
自然にできたら…みんなで喜ぼうな」

父がわたしの肩を抱いた

子どもができない苦しみ…か

そういえば…母さんはいつもお祖母ちゃんに冷たく言われていた

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