俺様執事に全てを奪われて
「結婚が嫌だったか?」

「え?」

「区役所で…不安そうな顔をしていた」

「あ…いや、よく…わからないんだ
結婚って何だろうって考えてしまって
元は好きだ
元以上に好きな人はいない
だけどなんか…ままごとの延長線上って気がして
結婚ってもっと厳粛で重いものだと思っていたから
トントン拍子に決まって、頭が追いついていかない
それに……」

これは言っていいものなのか?

元にはもっと別の女性がいいんじゃないかって…言っていいのか?

「それに…何だ?」

「元にはもっとふさわしい人がいるんじゃないかって…
海やバーベキューで思った
元は格好いい
女性たちが放っておかない
わたしと元は10歳も年が離れている
わたしはまだ子供だ
元は大人だ
話しだって、ぴったり合うわけじゃない
同じ趣味を持っているわけじゃない
元みたいに優秀な頭脳じゃない
そう思ったら…」

「なら、俺の気持ちはどうなる」

元の低い声が暗闇に溶けていく

少し不機嫌っぽい声だ


< 168 / 224 >

この作品をシェア

pagetop