俺様執事に全てを奪われて
「『わたくしの美貌を持ったら、できないことなんてないのよ』とでも言うつもり?」

わたしの背中から、女性の声が聞こえてきた

え?

聞き覚えのある声なんだけど

勢いよく振り返ると、和服姿の母が立っていた

薔薇の刺繍が輝いている着もので、髪をアップしている

帯には…ひらひらのレースがついている

…和服にレースかよ!

年を考えろよ、年を!

「葉月?」

聖子の顔色が変わった

「あら、私の名前…覚えていてくれたんだぁ
すっごい嬉しいわ」

母が、思いきり作り笑顔で口を開く

「忘れるわけないでしょ」

「うふぅん、忘れなれい卒業式だったものねえ
一生、私を憎んでいるつもり…でいるのかしら?」

「ええ、だから見合い相手をあなたの娘にしたのよ
思う存分、いじめられるでしょ?」

「まあ、楽しそう!
私も混ぜてほしいわ」

「嫌よ」

「あらぁ、仲間はずれは駄目だわ
聖子の悪い癖よ」

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