俺様執事に全てを奪われて
聖子が振り返ると、わたしの母を睨んだ

「有栖川家の内情を知らない人に言われたくないわ」

「違うでしょ
ただ聖子の憎悪だけでしょ?
一人息子が誰と恋愛をしようと勝手なはずよ
聖一郎君はすでに一人の人間として立派に成人しているわ
何もわからない餓鬼じゃないのよ
あなたの意見なんて、もう聞くような子供ではないの
残念ね
あなた、ここでどんなに滝沢家の性悪さを訴えても、聖一郎君には届かない
だって滝沢家は何も悪くないもの
夫婦間の問題を、夫婦できっちりと解決できなかったあなたたち問題があったんだもの」

「見てきたように言うのね」

母がほほ笑んだ

「見てはいないけど…聞いたわ
あなたの夫から
同級生だもの
相談に乗ったわ
結局何の役にも立てなかったけど」

母が視線をそらして空いている障子から、外の庭を眺めた

凄く寂しそうな眼をしていた

「そういうことだから
この件は、子どもたちの好きなようにさせるべきだわ」

母が立ち上がった

テーブルの上にある婚姻届を手に取ると、母は有栖川に一枚を渡した

< 178 / 224 >

この作品をシェア

pagetop