俺様執事に全てを奪われて
見た目で性格を判断されるのが嫌で

わたしは髪を切りたいと言った

もう何年も前のことだ

でも執事が許してくれなかった

『俺が手入れをしてやる
だから切るな』

その一言で、髪の手入れは執事である須山 元の仕事になった

わたしもメイドも、誰もわたしの髪には触れない

まあ、髪を洗う時は触れるけどな

それ以外は誰も触れない

美容院もココ何年も行っていない

行かせてもらえないと言ったほうが正しいな

黒いスーツに、色素の薄い茶色の髪

長くてきれいにカールしている睫毛

切れ長の目に、鼻筋の通った形の良い鼻

細長い綺麗な指で、わたしの髪を整える元は、ふっとほほ笑むと手をおろした

髪の調子に満足が入ったのだろう

「できたぞ」

元の低い声がわたしの耳に入った

真っ直ぐそろっている前髪に、腰まである黒髪が、さらりと動く

男はどうして長い髪が好きなのだ?
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