俺様執事に全てを奪われて
「……なあんてね」

「はあぁ?」

有栖川が気の抜けた声をあげる

わたしは痺れた足をのばすと、足を折り曲げて肉をぷるぷると揺らし始めた

少しでも早く血行をよくして、痺れから解放されたい

「ああ~、くるしっ
ああ、もう…なんなんだよ!
和服は嫌だって何度も言ったのに、信じらんない」

わたしは固い帯をポンっと叩く

苦しいったらありゃしない

元が、男の力できっつきつに結ぶから、座ってるのも一苦労だ

リラックスモードに入っていると、有栖川の手がお茶に伸びるのが見えた

「あ…それ、飲まないほうがいい
媚薬が入ってるっておば様が言ってたから
既成事実を作って、たとえ妊娠してなくても妊娠したって騒いで入籍するのが
おば様の計画だから…」

絶対、飲むなよ

有栖川とはそういう関係になりたくないんだから

わたしは立ち上がると、ぴょんぴょんと跳ねる

重力で血が早く足先まできてくれないだろうか?

「ああ…もうっ、足がしびれるのって苛々するっ
なんだって正座っていう座り方があるんだよ
胡坐でいいじゃん、胡坐でっ」

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