俺様執事に全てを奪われて
眠れない夜は薬のせい
10時前に家に到着した

元はつらそうだけど、額に汗をかきながらもいつも通りに背筋を伸ばして廊下を歩いていた

きっと…きついだろうにな

とくに下半身が

家に入るなり、元は執事用の白手をつけて、わたしの前を歩いた

『おかえりなさいませ、乙葉様』

通り過ぎるメイドや、使用人たちが廊下の端によって頭を下げていく

わたしは笑顔で、メイドたちを通りすぎて部屋にはいる

元だけがわたしの部屋に入ると、ドアに鍵を閉める音が聞こえた

ホテルに行っている時間がなかったからな

父からの電話が終わってから…下半身の処理をするつもりなのだろう

わたしは特に気にとめずに、髪留めを外そうとする

が、うしろから元に抱きつかれた

「もう、無理だ」

「いや…もう少し
父から電話が…」

「それまで一回はできる」

え?

わたしは元の腕の中で振り返った

元が苦しそうな顔をして、ネクタイを緩める

白手の指先を歯で噛むと、するりと手袋を外した

「ほ、本当に?」

「ああ、身体がつらいんだ
いいだろ」

いいだろ…って言われても…

駄目って言えないだろ

そんな苦しそうな顔をされたら…何も言えなくなる
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