俺様執事に全てを奪われて
「涙のあとが残ってる
どうした?」

「眠くてあくびが出たからだろ」

「…なら、いいが」

わたしは白いワンピースの裾を揺らしながら、歩いた

「乙葉」

部屋を出ようとするわたしの手を掴んで、元が呼び止めた

「辛いのか?」

「何が、だ」

「わからないならいい」

元が、ふうっと息を吐くと白手をつけて部屋のドアを開けた

「冷めないうちに朝食を食ってこい
俺はまだ仕事が残っている
夕食もたいして食ってないんだ
今朝はしっかり食べろ」

元はそれだけ言うと、食堂とは反対方向へ歩き出した

大股で、急いでいるようにも見える

忙しいなら、わざわざ元が起こしにこなくていいのに

髪だって、メイドにやらせればいいだろ

ムリ…するなよ

見ているこっちが、申し訳ない気持ちになるだろうが

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