俺様執事に全てを奪われて
父の電話でプチ家出は終了
「あ…そうだ
忘れたから、言っておく」

わたしは車から降りる前に、聖一郎に振りかえった


「聖一郎のお母さんに、今夜、聖一郎のマンションに泊まりに行ってもいいですか?って
言ってあるから!
よろしく」

わたしはにこっと笑った

「はい?
なんでそんなことを…」

「だって、なんか仲良くしているところを見せておいて方がいいと思って
だから電話だけど、しておいた
まあ、きっと一人で喜び酒でもやってると思うぞ
それと実家に行く日は教えてくれ
実家に押しかけてやる」

まあ、結果的には泊らなかったがな

聖子が確認しに来るわけじゃないから、別にいいだろ

…というか、父のせいで泊ることができなかった、と言ったほうが正解だろう

毎日、夜10時に電話があるって…おかしな家だよなぁ


「椎名さん、そこまでなぜ?」

聖一郎が首をかしげた

すごく心配そうな顔をしている

「私は、聖一郎の母のような人間が嫌いだ
どうして好きな人と好きに生きてはいけないのだ?
しかも私の家を馬鹿にした
聖一郎に女がいるせいで、格上の家と婚約できない
目をつぶって、私で我慢してやると…
ふざけるなと思った
聖一郎には悪いけど
私は、あの人の悔しがる顔を見たい
それだけだ」

わたしは口のはしを持ち上げて笑った

「女の子がそんな風に考えるものではありませんよ?」

『そんな風』に…ね

無理だよ

もう考えちゃったんだから

後には引けないよ



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