僕らのベリーソルジャー
「なのにね。」


それだけ言って、天馬は黙り込む。


一悟は、天馬を抱く腕に少しチカラを込め、しかし急かすような言葉は発することなく、ただ天馬が次の言葉を話しだすことが出来るようになるのを、黙って待った。


「…………………………あの時、伸びてきた腕は。」


しばらくの沈黙を挿んで話し始めた天馬の、綺麗に伸びた長く影を落とすまつげが、細かく震えている事に一悟は気が付いた。


「一生懸命に生きていた彼女に、何の躊躇もなく、無遠慮に。」


そこで言葉を切った天馬は、唇を引き結び、ギリッと奥歯をならした。


「彼女に針を突き立てて、殺してしまったんだ。」
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