102から202へ
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「別れよう。」
その言葉を聞いた瞬間、店員が料理を運びに来た。
「お待たせ致しました。
ボロネーゼパスタです。
お熱いのでお気を付けて下さい。」
鍋物じゃないのにね。
私は思った。
「聞いてる…?
リナ…」
ナオヤは申し訳なさそうにしてパスタを食べる手を止めた。
私のボロネーゼ、ナオヤが嫌いな魚介類が入ってるから別れたいのかな?
一瞬、本気でそう思った。
「…好きな子が居るんだ」ナオヤは唇を噛みながら呟いた。
こんな大事な事、ランチの最中に言うか?普通。
ナオヤは、そういう男。
高校3年の秋に友達を通じて知り合って付き合った。ナオヤはおっとりした性格でちゃんと付き合ったのは私が初めてだった。
男子高に通い、いつも眠たそうな優しい目をしてた。
それから5年が立ち、お互い23歳になり仕事も安定してきた今、あの鈍臭くてすぐ泣くナオヤに私はフラれた。
「リナの事大好きなんだけど、リナはいつも何事にも先に行ってて後から来る俺を待っててくれたじゃん…だけど、俺守ってあげないといけないんだなって本気で思った子なんだ…」
眠たそうな目で呟くナオヤ。
「リナは一人でも生きて行けるよ。」