死神の花
「遅い!」
玄関の扉を開けて外に出ると、怒声が聞こえた。それが自分に向けられたものだと言うことに気づくには、そんなに時間はかからなかった。
アイツ‥‥風花は腰に手をあて、青い瞳を吊り上げていた。そんな風花を一瞥し、俺は何も言わずに歩き始める。
「ちょっと!女の子を待たせて謝らず、更に無視するなんて酷いじゃない!」
俺の後ろから駆け寄って来ながら、風花は叫ぶように言う。怒っていることが良く分かる。だけど、全然恐くないのは俺だけか?
「待ってくれなんて‥迎えに来てくれなんて、頼んだ覚えはない」
風花に向けた冷たい言葉は、本当に思っていた言葉なんだろうか。
その時から、
俺は俺自身が
分からなくなっていたんだ。