死神の花
 
俺は暫く屋上に居た。
もともと、俺が屋上のような静かな場所が好きだからという理由もあったが、何よりもユキの怒りが怖い。
‥‥いや、だって目が殺る気だったし?
 
「あんなに怖い奴は会ったことないな‥」
 
ユキは笑ったり、怒ったり、照れたり、表情を直ぐに変える。
まだ会って間もない俺でも‥ユキは死神のはずなのに、本当の人間のようだと思った。
 
「死神って‥あんなものなのか?」
[ユキは特別♪他の死神は冷たいよ?]
 
俺の疑問に答える者は居ないはずだ。
それなのに‥‥答えが返ってきた?
 
[後ろ、後ろ♪シロは後ろだよ♪]
 
可愛らしく幼い印象を受ける少年の声だ。俺はその声が言ったことを少し疑いながらも、後ろを振り向いた。
そこに居たのは洋服を着た白兎のぬいぐるみで、首に鈴の着いた青いリボンが結んであり、フワフワと宙に浮いている。
 
[はじめまして♪シロはシロって言うの♪ユキに頼まれたから居るの♪]
「ユキに頼まれた‥?」
 
まさか、俺が逃げないように見張っているのか?うわぁ、嫌だな‥。
 
 
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