死神の花







あれから何度も化物はユキに襲いかかり、その度に返り討ちにあった。しかし、ユキは化物を痛めつけるだけで、致命傷を与えることはしなかった。
ボロボロの化物と、受け入れきれない痛みに震える峪下はやがて動きを止めた。

「嘘よ…梓がアンタなんかに負けるはずない……。いや、嫌だ!このままじゃ、また……」

見開かれたその瞳の焦点は合わず、顔は血の気が引いて真っ青になっている。これ以上やっても無駄であると既に分かっている筈なのに、峪下は再び化物を立ち上がらせた。

「…やるしか、ないみたいね」

その呟きを聞いた瞬間、ユキの姿は元の場所から峪下の前まで移っていた。

「ユキ、止めろ!」

考えるよりも先に体が動いていた。
俺の声に峪下が反応するよりも速く、ユキは鈍色の大鎌は振り下ろした。

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