YouAgain
「あのキモイ女なんていなくなって清々するじゃん!!」


「確かにー!!」



また汚い笑い声が響く。

俺は立ち上がり、カバンを奴らの足元に投げつけた。


「誰?いきなり何だよ!!」


美本舞子は唾をはいて俺の胸ぐらをつかもうとする。


俺は美本の手を強く叩いた。


「お前らのせいだ。お前みたいな奴がいるから瑠璃が苦しい思いをしたんだ!!」


奴らは鋭い眼光で睨みつける。西澤も小鷹も立ち上がる。


「誰って聞いてるんだけど!!てめぇふざけんなよ!」


西澤は俺の頬を殴りつけた。
小鷹はカバンを振り上げて俺をたたき返す。

唇からは血が伝い、制服にシミを作った。

しかしそんなことはどうだっていい。
俺は拳を壁に叩きつけた。



「何でだよ!!瑠璃は…瑠璃は…もう居ない!!瑠璃を返せ!!」



いつの間にか俺の頬を涙が伝っていた。

涙が溢れて枯れそうになっても怒りはとめどなく噴き出す。



「人の心を何だと思ってるんだよ!!暴力を振るわれるよりも瑠璃の心は深く傷ついていた!!」

いじめ。

なんてひどい暴力なのだろうか。

殴れるよりも痛くて苦しい。

泣いても泣いても痛みは取れない。

そして瑠璃は自ら命を絶った。

通夜の時、瑠璃のおばさんから瑠璃の遺書を見せてもらった。


『みんなごめんなさい。私はこれ以上この痛みに耐えられません。バイバイ。私の大事な人に思いを伝えたかった。ごめんなさい。本当にさようなら。』



瑠璃の苦しみ痛いほど伝わってきたのを今でも覚えている。


そのことは奴らは考えていないに違いない。


「瑠璃に謝れ!!今すぐ謝れ!!」

俺は手のひらを振り上げた。
やたらと時間が流れるのが遅い。


いや…止まっている?


誰かに電話しようと派手な携帯を開く小鷹。

その場から逃げようと走る西澤。

目をつむる美本。


外を歩く人。

夕暮れの空に浮かぶ雲。



全てが止まっていた。
< 13 / 14 >

この作品をシェア

pagetop