YouAgain
バケツの底に溜まっていた水に触れていたせいで濡れていた。

俺は瑠璃が駆け下りていった階段を二段飛ばしでおりる。

瑠璃はたしか自転車通学だ。
全力で飛ばしたら間に合うかもしれない。

俺は立漕ぎしながら瑠璃の家に向かった。






−瑠璃の家


「瑠璃の自転車だ。」

瑠璃はもう帰宅している。
俺はインターフォンを押した。

「…はい、どちら様でしょうか…」


震えたか細い声が聞こえる。
ローファーをインターフォンのカメラに向けた。


「これさ…瑠璃のだろ?」

「…純君もう放っておいてよ。私のこと。私のメールアドレス消しておいて。」


ガチャンという音がした。
瑠璃が切ったのだろう。

俺は早くローファーが乾くように配布された数学のプリントを丸めて丁寧に詰め込んだ。


「ん…そっか…じゃあここに置いておくから。」

半ば独り言のようにローファーをそっと玄関の片隅に置いた。



帰り道。自転車のペダルがいつもよりも数倍重く感じる。


夕日に照らされる桜の花びらは美しいがどこか寂しい。


コンビニで適当に雑誌と缶コーヒーを買い、帰宅した。
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