恋するキモチ
「明梨、長い間、待たせてごめんな」
「えっ」

いつもの帰り道だった。
いつもと同じ徹平と帰る道。
何も変わらない帰り道に、不意に徹平がそう切り出した。


二人とも立ち止まる。


「篤朗のこと、知ってるよな」
「うっうん…」

「俺さ、篤朗の気持ち考えたら、明梨に返事できないってあいつに言ったんだよ。でも、それは逃げてるだけだって言われた」

「篤朗の気持ちを知ったからこそ、明梨のこと、ちゃんと考えないとって思った。だから、ちゃんと考えたから」

「…うん」


自分の心臓の音以外、何も聞こえない。
徹平の声も聞こえない。

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