HANABI
それまでは、用具係の仕事がたくさん待っている。

用具テントにいくと、さきにヒロヤがいた。

「あ、来た来た。おせーよ!!」

ヒロヤは笑顔で言った。

「ごめんごめんっ」


「今日俺たち一緒に弁当食べるんだって」

「そうなんだぁ」

ヤマトの家とは家族ぐるみで仲がいい。

「マジ腹減った。よし、持っていこっか。俺これ持ってくから、ハイ、旗ね」

「オッケ〜」

着順旗を持って、ゴールの近くに行こうとすると……

重い。


右手に一本、左手に一本。

二本も持って行くなんて、とてもじゃないけど無理だと思った。


ヒロヤはそんな優花に気付かずに、どんどん先を行く。

そのとき、左手にあった今までの重たさがスッと消えた。

「もう一組目スタートしてんぞ。お前間に合わねぇじゃん」


聞き慣れたはずなのに、
どこか懐かしい声がした。
< 29 / 43 >

この作品をシェア

pagetop