聖花学園~花よ咲き誇れ~2
 呉羽先生とまた二人っきりになるのは危険かも知れないけど、窓のすぐ外はグラウンドだし、廊下を挟んで向かい側は職員室だ。


 いざというときは大声を出せば誰かが気付いてくれるだろう。




「大丈夫だ。実際眠っているだけだし、心配するようなことは何もない」

 さっき、わたしを嘲笑うように言ったのと同じ声とは思えないほど優しい声で呉羽先生は言う。


 実際わたしもそれに騙されていた。

 まさかあんな嫌な声と冷たい目をするような人だとは思わなかった……。


 悔しくて、わたしは唇を噛み締める。


「だから戻れ、桂にはお前が心配していたことは伝えておくから」

「……はい」


 そうしてその子は保健室を出て行ったようで、「失礼しました」という声と一緒にドアの閉まる音が聞こえた。



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