お嬢様の憂鬱【下】



それからあたしは手をひかれて街を歩いていた


まだ、人がいない


冷めた街。


夜になれば、人であふれかえる街も今はまだ



しずかすぎて逆に不気味すぎるくらいだ



「名前、なんて言うの?」


ふいにこの男に名前を聞かれた


「人に名前を聞く時は自分から言うのが礼儀でしょ」



冷たく返した…つもりだったけど男はあ、そうか…と照れ笑いをしてから


「僕の名前は稜(りょう)だよ」


と言った。


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