愛と青春と追憶の みどる。

わたしは、

高校二年生の頃から、

静かに、そっと、




おべんきょう




を、始めました。




地元に流れる、通称、

「ナマズ川」のすぐそばには、


個人経営の塾が、ありました。

その塾では、

たらこくちびるでナマズ顔で、

まだ二十歳すぎのはずなのに、

なぜか口ひげを生やしている、

そんな、




ナマズ先生



が、いました。



そして、ナマズ先生の字は、

ナマズのようではなく、

みみずのような字でした。

壮絶なるまでに、へたくそな字、

なのでした。


どのくらいへたくそかと申しますと、

ずばり、

教育界に身を置く人間としては、

奇跡的かつ、衝撃的かつ、

破壊的かつ、致命的なまでに、

壮絶にへたくそな文字、

なのでした。




そして、

わたしもその先生と同じ大学、

通称、



ナマズ大学



を、目指すようになりました。



当時はまだウィンドウズなる

おふぃすしすてむなど、

この地球上に存在しておりませんでした。


したがって、

全てテスト問題は、ずばり、


手書き。そして、コピー。


でした。



ナマズ先生は、

教育界に身を置く人間としては、

奇跡的かつ、衝撃的かつ、

破壊的かつ、致命的なまでに、

壮絶にへたくそな、

その文字で、

毎回したためた、

単語英訳和訳アクセント問題を、

人数分コピーして、

私たち生徒に解かせていました。