モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
会社から帰る夫は、大抵、ひどく不機嫌だった。

疲れているのだろうと、裕子は神経を逆なでしないように気をつけた。

テレビを見ていても、

『俺、この女優、大っ嫌いなんだけど。見るだけでイラッとなる。
裕子はこんな奴が好きなのか?』

一度だけ、

「私は割と好きだよ」

と間違えて答えてしまったことがあった。

その後、夫は裕子と一切会話をしなかった。


NGワードが次々と増えていった。

地雷のない場所を選んで歩くような生活は、裕子の胃腸や後頭部に不快感をもたらした。

気がつくと、毎日何かしらの薬を飲むようになっていた。




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