モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
マンションに帰ると直哉は戸棚からウィスキーの瓶を持ってきた。
(平日に、また飲むのか・・)
機嫌の直らない様子の直哉はポテトチップスを開け、わしづかみでバリバリと食べては、
それを流し込むようにウィスキーのロックを煽った。
狭いワンルーム。
なんとなく居心地の悪い裕子は、一度アイロン掛けした枕カバーをタンスから取り出して、
もう一度アイロンを掛けた。
『あのさぁ、裕子・・・』
口の周りにポテトチップスの青海苔をつけた夫が話し始めた。
『さっきの謝り方、あれ、なんだよ? 』
「え? ・・・普通に謝ったつもりなんだけど・・・ 」
『普通? 何それ? お前、人のこと馬鹿にしてるわけ?』
夫は酔っている・・・けれど裕子は急に腹立たしくなってきた。
「私が謝ることなの?自分は謝ることはないの?」
キツイ言い方で返した。
「はぁん? 開き直るのか、立場が悪くなると。
得意なパターンだよな。ふーん・・・」
夫はゆらゆらと立ち上がった。