モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
「どすっ」
「どごぉっ」
直哉はソファーを蹴りはじめた。
裕子の母親が、二人の結婚祝いに買ってくれた物だった。
「女の分際で、俺をあんまり怒らせない方がいいよ?
カーッとなっちゃうタチなんでね。 」
ソファーの上のカバーがずるりと床に落ちた。
同時に裕子も立ち上がった。
「直哉・・・ あんたもあんまり私を怒らせない方がいいわ。
私は暴力なんてちっとも怖くないし、そんな風に脅すような愚かな男の言いなりになるつもりもないから。」
それだけ言うと、裕子は自分のバックを持って玄関へ向かった。
『おいっ! どこ行くんだよ!?
おいっ・・・・ 』
裕子は外の空気を大きく吸いながら、大股で歩いた。
どこに向かっているわけでもなかった。
ただ、自分の吐いた台詞とは裏腹に、膝がガクガクと震えていた。