モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
バーにつくと、いつもより濃いめに化粧した加奈の顔が見えた。
裕子が手を振り、近付くと
後ろ向きに座った二人の男性がこちらを振り向いた。
加奈が、咄嗟に一人の男性の手を取り上げ
「じゃーん!! この人が、加奈の彼氏でーす!」
と紹介した。
「ああ、やっぱりそうだったのね。どうも、裕子です」
加奈に腕を組まれながら、如何にも爽やかそうなその彼氏は
「加奈の親友の裕子さん、噂はいつも聞いていますよ」
と優しい笑顔を見せた。
「何よ噂って・・加奈、悪口言ったでしょ!」
冗談を言いつつ、裕子は自分の鼓動がドクドクと早くなるのを感じていた。
それは幸運なことに、加奈の彼氏という男に対しての物ではなかった。