モラルハラスメントー 愛が生んだ悲劇
すっかり優位に立った倉澤は、裕子を完全に支配することにした。
その上、無言の圧力をかけ、家事などに対する手抜きは断じて許さなかった。
裕子がアイロンをかけたワイシャツに少しでもシワがあるのを見つけると、灰皿などを思い切り床に叩きつけ、
ワイシャツにハサミを入れて、これみよがしに食卓の上に散らばせておく。
『狂った女を家においてやっているんだ。 家事くらい完璧にやれないなら裸で外に追い出すからな』
食事が好みに合わなければ、皿ごとごみ箱に棄てておく。
倉澤の好みの酒が補充されていなければ、酒の入った戸棚の開け閉めをバタンバタンと、裕子が買いに行くと言うまで続ける。
『離婚してやろうか? お前も母親も、ホームレスにでもなるか?』
『歩くなよな。走って行けよ!!』
真冬の夜中に、裕子は何度も1キロ近くあるコンビニまで、全力で走らされた。
このような陰険な嫌がらせが続けられていた間、裕子の携帯電話は倉澤に取り上げられ、親には元気でやっているとのメールを送らされていた。
また、部屋に監視カメラを仕掛けたと嘘をついて、裕子に買い物以外の一切の外出を禁じていた。
買い物に行く際もストップウォッチで時間を測られていたという。